ジビエについて考えた

「野生のイノシシを食べるなんて気持ち悪い」

これは移住してはじめてイノシシを頂く機会を得た時に、妻が言った言葉でした。
少なからず僕もそれに近い気持ちはありました。
ところが頂いたイノシシの肉はとても美味しく、当時の自治会長から「狩猟免許を取らんか?」と勧められた時には喜んで取りに行くことになったのでした。

その後、はじめての解体、はじめての止め刺し、多くのイノシシ料理を食べることを経験するにつれて、自分の感覚は大きく変わってきました。
「飼育した豚を食べる方がよっぽど気持ち悪い」という感覚になってきています。

年末に罠にかかったイノシシは推定5歳メス、体重80~90kgくらいでした。おおよそ平均的な大きさだと思います。
しかし、スーパーで売っている豚は、1.2kgで生まれて、なんとわずか6か月程度で100kg以上になったところで出荷されるそうです。
それだけ大きくなるように品種改良されているのはもちろんのこと、どれだけ密集させて、どんな餌を与えて、どんな薬を与えたらそんなに短期間に大きくなるのでしょうか?
野生のイノシシは、山を駆け巡って、どんぐりや栗やタケノコ、時には畑のイモなどを食べて育ってきました。抗生物質などは当然打っていません。
健康そのものです。内臓もピッカピカです。
いったいどちらが気持ち悪いのでしょうか?

イノシシが「臭い、固い」と言われるのは、血抜きが悪いという問題もありますが、基本的に大人の獣の肉は固くて臭いのです。
羊の肉は臭いで有名ですが、子羊の肉(ラム:生後12か月まで)は臭くありません。
豚も大人になれば筋肉も発達してくるので固くなるし、臭くもなります。何よりも個体差が出てきます。

鶏で言ったら地鶏でも4~6か月で出荷しますし、ブロイラーは2週間で出荷されます。
短期間で子どものうちに大きく育て、味や柔らかさを均一に出荷することが、現代の消費者の要望を満たすことに繋がっているのです。
都会に住んでいた頃の、固い肉や筋が苦手だった僕や、安い肉を探し求めていた妻に、養豚農家は合わせているのです。

それに対してジビエを楽しむということは、味の違い・固さの違い・臭いの違いを楽しむということであり、その違いを生かした料理法を楽しむことなのだと分かりました。

我が家では昨年大きな冷凍庫を買い、今回のお肉も半年くらいかけて無駄なく感謝して頂いていこうと思っています。

そんなこんなで、今年の新年は、地元の神社とお寺に初詣でに出向き、今まで以上に山や動植物への祈りを熱心に捧げている自分がいることに気づきました。


※以下、写真にグロいシーンがあるので苦手な人は見ないでね。

今回は笠置猟友会に新しく入った若者が仕掛けたくくり罠で。
両足をしばって生きたまま捕獲。
この方法だと解体直前に放血することができます。
彼は仕事があると言って解体には参加できませんでした。
写真に写っているのは、夜行バスで川崎から飛んで来てくれた息子です。

皮はぎはカッターナイフを使って。

解体には妻も参加。
かつては「絶対無理!」と言ってた人が
こんなこともできるようになっています。

ミンサーを買いました。
なるべく無駄にしないために、ブロックにならない部分をひき肉にします。
これでソーセージもハンバーグも餃子もできます。

はい、ソーセージです。
腸を洗うのがとてもたいへん。
市販のソーセージがあんなに安いのが不思議。

今回はじめてもつ煮をしました。
何回も煮てはこぼして臭みを取ります。

こちらは「馬油」ならぬ「ぼたん油」
ネットで見たら馬油よりも高価で良質だと。
使ってみたら今までに使ったハンドクリームよりも極上!
なめらかでしみ込みが良く、保湿効果がすごい。
その上、手がほかほかする。漢方効果もあり。
いろんなところが無駄にできない。